Essay
第3回 「 !! ミスディレクション 」
タイトルを見て、「!!」はいったい何だ? と思ったあなたはすでに術中にはまっている。本来注視されたくないところから目を逸らすために別のところへ視線を誤誘導する、すなわちこれこそが「ミス(miss:誤った)ディレクション(direction:導き)」なのだ。もう一度タイトルを見てほしい。実はわざと誤植してあって、「ミスディクレション」になっていることにお気付きだろうか。
そう言われて見直した貴方、かっかっか、ひっかかったな。またもやミスディレクションである。おっと、そんなことで目くじらを立ててはいけない。
今回はマジックの真骨頂とも言えるこの「ミスディレクション」を皆様の日常生活にも活かす方法を伝授してさしあげようという、随分上からの物言いにも聞こえるが、前代未聞の特別企画なのだ。
◆パターン別実践編
シチュエーションその1
なんだかものすごい後ろ美人が前を歩いている。なんとしてもお顔を拝見したい。見てどうなるものでもないが男子の本能として確認せねばなるまい。そんな時こそ、ミスディレクションの出番である。
まずあなたは、通常の1.5倍の早足でその女性を追い抜かなくてはならない。しかしすぐに振り返ってはダメだ。思惑がミエミエだからだ。さらに歩を進め、10mほど引き離したところでおもむろにポケットから携帯電話を取り出し、周りをキョロキョロしながらターゲットのフェイスをプレビューするのだ。
この方法ならば、傍目には単なる待ち合わせの人探しをしているようにしか見えない。これで本来の目的を隠蔽したまま安全確実に目的を達成できるというわけだ。実に巧妙なミスディレクションというほかないだろう。
ただし確認の結果そのものに責任は持てない。
シチュエーションその2
あなたが女性ならばこうだ。あるデートの朝、こともあろうか眉毛を描くのを忘れて出かけてしまった。
こんな窮地をも救ってくれる頼もしいミスディレクション。
この状況でのポイントは口紅だ。口紅を・・・・・・真っ赤に塗ってそちらに注意を向けさせろと言うと思われただろう。逆だ。口紅を濃くすればするほど薄い眼元とのコントラストは際立ち、ノッペリ能面ヅラが印象深くなるだけだ。
使うアイテムはティッシュ一枚でいい。それで口紅を拭い落とし、全体を薄化粧にする。そしてそのティッシュを丸めて鼻に詰めるのだ。
これなら彼氏も「今日は顔色が悪いね。しかも鼻血?」と心配してくれ、最後まで眉毛の件には触れられずに済むというわけだ。
ただしこの方法を用いて最後のデートになったとしても苦情は受け付けない。
◆使い方次第では痛い目に
このように、一見便利に見える「ミスディレクション」だが、一歩使い方を誤ると自分を傷付けかねない諸刃の剣となることも忘れてはいけない。
尾籠な話で恐縮だが、ある友人は小学生の時、授業中にたまらなくオナラがしたくなり、考えた挙句「わっ」と大声に紛らせてしまえば聞こえなくて済むじゃないかとひらめいて実行に移したのだが、意に反して彼の括約筋は微妙なタイムラグを生じさせ、「わっ!」という大声で教室中の注目を一身に集めたところで念願の放屁に至る、いう哀れな失敗例も存在する。
さぁ、皆さんも勇気を出してぜひ「ミスディレクション・ライフ」を満喫してほしい。
ただし、本当に大切なことやツライことからは目を逸らしてはいけないことも付記しておく。
・・・・・・次回はもっとまともなのを書きます。すいませんでした、、、。